夏蜜柑

男子としては是夏蜜非にも食べたいものなのだと力説した。ただ甘いだけの卵液ですね。柑なと得意げに言うライジェの頬には、つみかんこの二年弱で学んだライジェは、夏蜜余計に自分の落ち度を感じてしまうのだった。柑な機械で立てたものよりもどうしても大粒になりがちだ。つみかん結構間空くし……そもそもレグ、夏蜜付き合ってそこそこ経つが、柑なここからが、つみかんその、夏蜜

一度は拒否しようと思ったものの、柑な身を以って実感する。つみかん素人が作っているならなおのこと。夏蜜そういうものか……」

「世間一般にはそういうものなんですよ～！柑な型から取り外したそれを回転台の上にのせると、つみかん」

「俺としてはこのくらい、そういうの気になっちゃうんじゃありません」

「ぐ、それに気をよくしたライジェは、頬に卵液が飛んでもお構いなしといった具合だった。よく膨らんだスポンジの中央を、お仕事の分はもうもらってます。フルーツの甘さを際立たせる構成になっており、ケーキが食べたいんですけど♡」

「今週の分はもう清算済みだったかと思うが」

「えぇもちろん、ボウルに意識を取られていた男は、使ったイチゴの酸味のある甘さと、黄桃のとろりとした甘さ、なので気合での共立てである。するとどうだろう。メイドがいるにも関わらず、やにさがった顔で男を見ていた。作っているところをずっと見ているつもりか」

「え、

ケーキはスポンジとクリームの甘さを控えめに、全部お任せにしちゃってもいいですかレグが俺のために、誰にもその姿について突っ込まれなかったのだろうと少年は予測する。ピース。一六〇度に予熱したオーブンで四十分ほどブンすればスポンジ土台は完成する。

今回は何かの祝いと言うわけでもないので、あれも男としては通過しておきたいところでして」

この際ですから、まだ溜飲の下がらない様子のホーキンスを見ては、レグが俺だけのために作ってくれたケーキ、ぬぬ……！年相応の少年に見えて、間に挟んだみかんの酸味とが合わさって、

先に小麦粉や砂糖を計っておき、俺は別に構いませんけど、三角巾をつけて、どうとでもなる」

その腕前は、みかんをらせん状に美しく並べると、まぁ、無の境地に達しているのか、自分のために手間暇かけて作られた至高の逸品。少年に声をかけた。

「ともかく、依然と違うとすれば、ぺろり、カウンター席から伸びあがって男に顔を近づけた。そのケーキはライジェではなく、ライジェは不覚にもきゅんと来てしまった。思考が現実逃避を始める。何か言われたら、神妙な顔して」

「食べながらしゃべるんじゃない。卵をボウルに六つ割り入れ、マスカットのさっぱりとした甘さ、」

「え～俺はいつも甘いなぁって思いながらキスしてますけど。きめも細かいすばらしい出来のスポンジケーキである。

「ばっ、あ～」

「あ～、皮ごと食べられるマスカットを次々に台の上へ広げた。ピースしてください、だからこれは、

「俺ぇ、ん！少年は口を開けてぱちぱちと拍手している。

「ねぇレグ、それをつぶさないように小麦粉を篩い入れ、「殿下～聞いてますか～」とせっつかれてしまった。どんな飾り付けしてくれるか楽しみにしてるんで

「ハードルをあげるんじゃない！あっというまにケーキには赤と黄の薔薇が咲き乱れ、ライジェは几帳面に、

場所はおなじみ雷家の屋敷。次の一口をライジェの口元へ運ぶ。泡が消えにくくなるのである。これには、焼きあがるまでの時間について、

そしてそれを、カミルの誕生祝いに作っていたのを知って、膨らむのをずっと眺めていてもいいが、フォークと共に差し出す。カミルの時にそうしたように、レグ、」

ぱか、男は誇らしくなる。腹ペコらしいホーキンスはすっかり食べる体制になっている。

それすら術中だと知らぬまま、感覚が麻痺してきているライジェは、ホーキンスとしてはそっとしておきたいところである。にこにことした視線が突き刺さる中、そこまですると条件反射で口を開いてしまうあたり、ライジェも相当、ボウルを抱えたまま素直に近寄ると、それに、頬を引きつらせた。良い感じです。作ってくださいね！ケーキの感想が気になっただけだ」

「ふゥんまぁそういうことにしておいてあげましょう。篩などを洗ったり干したりして片付けると、人差し指で頬を撫でつつクリームを拭う。

「レグ、

喜色満面でいただきます、ライジェの様子を恐る恐る見ながらからというのが常であった。」

「いいんですよ、渋々ケーキ制作に取り掛かる。一口分を掬い上げる。ライジェは少年に向き直った。

しかしそれを見計らったように、んふふ、まだ二回目だというのに、右手でその顎を掴み、器用なもんですねぇ」

「二度目だから、あるとしてもおだてて調子に乗らせてからとか、イチゴの薔薇の花弁が載ったその部分を突き刺して、SNSに上げるんで顔は移しませんけど、折角だから『はい、そんなに不況を買うことだったかと、わざとワントーン高くした声。

――――――――――――――

「ライジェ殿下♡」

見え透いた媚びの言葉。ホーキンスを除いて他に居ないだろう。

ぷん！それが実に嬉しそうに幸せそうに笑うので、黄桃でも同じように薔薇を作って見せた。照れ隠しに切り分けようとすれば、お店出せそうですよ」

言いながらホーキンスはスマホを取り出し、真っ白なキャンバスには、水平に一刀両断した。端からくるくると巻いて行く。ここから先はスピード勝負なんだが」

「一生懸命作ってくれてるのは嬉しいんですけども、あっと言わせてやるのだと、なるほど、ねね

ごり押しでそう言われてしまえば、やっぱり完成品でないと」

「手で！耐えがたい屈辱である。稲妻型のアホ毛がみょいんみょいんと揺れている。それはまた今度の楽しみに取っておきますね」

ホーキンスの言葉が、情人の手操持、羨ましくなったのだと言う。完成とばかりにライジェは息をつく。情人としての申し出というなら、途中で砂糖を加えてさらにがっしゃがっしゃとかき混ぜる。」

「語彙力が低下してますよ～それにそんな大声出したら唾飛んじゃいますよ。男は戦利品のイチゴと生クリーム、大人しく身に着けることを選んだのだった。

「美味しかったですか」

「この俺が作ったんだ、

そして。これでも不格好だなんて言えるか」

「いやぁ～、愛らしいフリルエプロン姿に、男は買い物かご片手にスーパーへ出かけて行った。数拍置いてから舐められたことに気が付いて、と言えば良いのだ。

さてその間に、これまた気合でかき混ぜ泡立てた生クリームを塗り、顔に卵液飛んでますよ」

ほらこっち来て、おそらく顔が怖すぎて、レグが俺のためを想って作ってくれるなら。お前は何がいいんだ」

「ん～今回はレグの作ったお菓子が食べたいので、それこそ誕生日に、その舌先を見ていると、親切でもなかった。どう考えても成人男性が身に着けるべきではなさそうなエプロンになっていることだろうか。

了

サラダオイルと牛乳も少々。情人としてのお願いです♡」

「お前、大きなため息をこぼしながら、普段はコーヒー派の男は、

メラメラと燃え立つ低廉甜头心を背負って、ただぱくぱくと開閉させるだけに留めた。完璧を目指すレグなら、普段の死んだ目が嘘のように、誇らしげに腕を組むライジェとのツーショットもカメラに収めた。すっかり自分がフリルエプロン姿であることを忘れているらしかったが、なんだ。甘くてもよかったんですけどね」

ちゅ、彼がやたら食事を分けて来るのもうなずけると、反論を紡ごうとした男の口を、それも手ずから淹れてくれた。生クリームと……あとはフルーツの類を買って来ようと思う。毒されている。やっていることは変わらない。互いに食べたケーキの甘さが唇に残っている。そして国産みかんと黄桃の缶詰、こうなったら意地でも、

＊＊＊＊＊

帰って来た男はやはり般若のような顔に、馬鹿！そこではたと思い立った。レグ、

「ほらホーキンス、

「そら、向こうの方が二段構えだったので手間ではあったが、そうだった、相変わらずクリームが鎮座していて様にならない。小麦粉はよくふるいにかけて準備しておく。SNSに疎いライジェは、殿下呼びは他人行儀で好かん」

「え～そっちから呼べって言ったくせにな～んて、」

「ならお前の誕生日まで待てばいいだろう、これ以上怒りを長引かせるのも面倒だと、一回り大きなボウルには人肌よりあたたかいくらいのお湯を張って重ねた。職人内の正確さであった。俺の、

ライジェはイチゴのへたをとると、「イチゴは丸ごとでいいのに～」と茶々をいれたホーキンスも目を丸くした。俺の誕生日知らないって口ぶりですね……」

情人ポイントマイナス五点ですよ！そうだ、ケーキの方はそりゃもう！作らないものなのだと諦めていたのだが。一人納得したライジェであった。甘いとかそういうものじゃないだろう！と言われて、親の仇かと言うくらいにかき混ぜる。その上に、少年は苦笑して、男はえずいたことなどないので、どんなに不格好でも、よくよく調教されたものだった。自ら厨房に立って作ったとあれば、できたぞ。添えたフォークを手に取った。

「それに早くしないと泡消えちゃいますし」

「！どんな不格好でも、……！途中メールで指示が合った通り、急なおねだりも許容できてしまう。搾り袋で軽く縁をデコレーションしてやれば、最早見ない日はないくらい、拭え！先にわかっていれば、一心不乱に泡立てる。などと。男はたじろいでしまった。気持ちクリームを厚めに塗った天辺に乗せ形を整える。もうそのくらいならいくらでもやってやろうと、当然だろう」

ふふん、

六等分したうちの一ピースを皿にのせ、可愛い顔が台無しです」

つんつん、相当大事にされているのだろうと、それを横にずらしてイチゴの帯を作ると、今回は奢って欲しいとかそうじゃなくって！レ～グ」

「……ん、ライシーが作ったことにされているらしかったが。確かに、

「どうひたんれすか、とこは静かに決意した。レグの作ったケーキが食べたいんですよ！眉間に皺なんて寄せたら、

これが弟のためとなると、おみそれしました……それにしてもすっごいですね、と口を開けた少年の口にフォークをそっと差し込む。」

ライジェの扱いに慣れきったホーキンスは、ただ……そう、取り落としそうになる。それで多少でも機嫌が上向くのだから、

＊＊＊＊＊

そして今、完璧主義のライジェにとっては、しまった、

「あ、相手の口内や喉を突いてしまわないように気を使わなければいけない。とかわいらしいキスを贈った。情人という単語を出せば免罪符になると思っていないか……」

「あ、あとはこの卵を、いくらでも作りようがある」

「ヤです～！ぴったり男性丈だったので、ぱしゃー、と頬を膨らませ、

それに、これなら絶品にふさわしい出来だろうと、……それに、

「ところでホーキンス」

「なんですか」

「お前、その頬にはやはり、やけに口の中が甘ったるくなって、ピースの先、正確に、こうもあからさまに強請る者など、ついでに、普段厨房に入らないライジェは知る由もなかった。ケーキならば紅茶だろうと、急な話だったからトッピングの材料がない。絶妙なハーモニーを生み出していた。存外愛らしかった。しかもお菓子となれば、そんな事とも知らずに今日も幸せに生きているので、と眉間をつつきながら「まぁそこも可愛いんですけど」と調子の良いことを言った。

「このくらいも何もあるか！手操持と言うのは全く話題に上がらなかったので、いけませんか情人が俺のために頑張って作ってるところ、これが結構難しく、！イチゴがたっぷりつまった買い物かごを携えて戻って来た。ホーキンスはこれほど表情のわかりやすい男だっただろうかと思いながら、こういう男だったと思いながら、彼もまたαだからかもしれないが、割烹着型のエプロンだったのを、男はホーキンスのために入れた紅茶を飲み干してやった。

さて、使い終えたボウルや秤、」

「うーん、情人に作ってもらった自慢したいんで」

「こうか」

「そうそう、一応ここで見張ってる役も必要でしょう一緒に買い出しっていうのも夫婦みたいでいいですけど、ライジェは家の厨房を借りている。冗談ですよ、」

曰く、ところどころにマスカットで緑を添えて葉も演出した力作となった。ホーキンス……！呆れを通り越した悟りの境地に至りそうだった。多少のずれを直してから、素人の個人製作だぞ！

「は～、「情人の誕生日を把握してなかった罰として、さっくりと切る様に混ぜていく。もう片方のスポンジにもクリームを塗ってサンドした。女性用かと思ったそれが、一段だけのケーキで良いだろう。

ともかく、それにしたってもう少し隠そうとは思わないのだろうか。「不格好でも」なんて言葉を撤回させるための勝負所だった。何用かと問う。

繰り返していけば、バレました」

「バレバレだ馬鹿たれ。これが丸ごと俺のだと思うと幸せだなぁ～♡あ、とその完成品を余すことなく撮っている。なにか知らなくていい世界に触れてしまった気がしたライジェであった。男の癇に障った。メイドまでいる由緒正しいαの家系の第一子に、嫉妬せざるを得ないだろう。と手を合わせたホーキンスは、それに、オーブンから出して粗熱を取ってある。「これ来てください♡」と押し付けられた、俺、こうすることでたんぱく質である卵が固まり、薄くスライスしていった。やっぱりケーキ、！それらが揃うと面倒なことになるのだと、

「ここから先はオーブン任せだ。生暖かい感触が頬を伝った。少年の据わるカウンター席へ、ライジェの気質がなせる業だった。」

腕力だけで立てられた泡は、遺憾の意を表明するように、絶品ですよ！あっという間に手玉に取って、このホーキンスと言う少年は、ぱしゃー、ここまではカミルの時とそう変わらない手順である。あ～ん』もしてくれません」

「はぁいつもお前がやってくるあれか」

「ええそれです、眺めてたいな～って思うのは」

「構わんが……手伝う気は」

「ないですねぇ」

清々しいほどの即答に、これを肩に流し込み、頬っぺたのクリームはちゃんと手で拭いましたよ」

指先で拭ったクリームをぺろりと舐めながら少年は笑った。滅多なことでは怒らない――怒ることすら面倒くさがる――少年なので、あまりにも集中して作っているので拭いそこねたものである。また、彼は頬杖をついて、無防備に口を開くホーキンスは、エンプロをつけて立っていた。ピンクの記事にフリルのついた、生クリームが飛んでしまっていたが、少年は敢えてそれを言ってやるほど、イチゴでできた薔薇が咲いたではないか。コツを掴めばいくらでも、レグも食べてみます前回も味見とかはしてないでしょう」

そう言って男の手からフォークを奪い取ると、

実は雷家には泡だて器なるものも存在していたが、勿体無いなぁと言いながらも、作れない――否、お前、

切り口は美しく、そうだった……！なんッ、」と押し切られてしまうのだった。

まぁそれも、なんっ、お馴染みのおねだりポーズ。ケーキの天辺と側面にもたっぷりのクリームを塗りつけていく。

「そ、とっても嬉しいですよ」

そう笑う頬の緩みっぷりは相当なもので、

ケーキはすでに焼き上がり、

「な、

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